カテニオンコンサルタントの一日

イタリアに広がる霧の影響でベルリンへ戻るフライトが30分遅れている。その合間の時間、私は新しいプロジェクトについて考えていた。

その2週間前まで、私は同僚とまだカリフォルニアに滞在し、世界屈指の大手製薬企業のクライアントプロジェクトに取り組んでいた。我々のチームはシニアパートナー1名、2名の同僚と私の4名から成り、クライアントのR&D組織におけるガバランス及び組織構造の評価、特にイノベーションの阻害となりうる弱点の同定に努めていた。そして、ベルリンオフィスに1週間程戻り、今回の新プロジェクトの準備に取り掛かっていた。

今回のプロジェクトは明らかにいくつかの点で通常と異なるところがあった。まず、このクライアント企業は製薬産業におけるニッチプレイヤーとも言え、治療分野に特別なフォーカスがあるわけではなかった。また、家族経営企業であるところも通常の我々のクライアントと異なる。しかし、サイズこそ小さいが、世界的なオピニオンリーダーらと強いコネクションを持ち、また稀なビジネスモデルも功を奏して新薬開発パイプラインもそのポテンシャルが高い。

第一回目キックオフミーティングにおいて、我々はクライアント企業のオーナーと3名のシニアマネージャーと協議した。私の期待通り、クライアントチームは強い企業家精神を持ち合わせていた。一方、彼らは彼らと似たような仕事のスタイルを我々に期待していた。

実は、このクライアント企業には、後期開発プロダクトの上市管理に失敗してきた過去がある。適切なマネージャーや管理システムが存在しておらず、組織の中で独立したいくつかの機能によって上市管理がなされていたが、企業全体、もしくはイタリア外の戦略パートナーを通して体系的・統括的に上市するためのシステムが備わっていない。このことが今後の数ヶ月、我々のシニアパートーナーと私自身の挑戦になることが予想された。

第一日目より、上市プロセスのために独立していた部門・役割は一つのチームとして統合的管理ができるようにしなくてはならなかった。また、研究、治験開発、法規制、製造、マーケティングを含む必要とされるタスクを詳細に特定するとともにその強化にも当たらなくてはならない。その後のチームでのワークショップで、綿密なスケジュールを決定していくためにチームを指揮していくこと、また相互依存関係について議論する必要が考えられた。

その後の数週間は、大変難しいものであった。突如一つのチームとして動き出したものの、その統一性の希薄さ、タイトなスケジュールにより度々摩擦が生じ、さらに以前このクライアント企業を支援していたコンサルタントも加わり事態は混沌としていた。一方で、イタリア国外のライセシングパートナーとの共同開発・マーケティングについても進めていた。

私の葛藤や挑戦は続いたが、しかし、意外なところから状況は平静へと向かい始める。それは、彼らとディナーをともにし、よりイタリア式の文化、生活を私自身理解し、楽しむように試みたことであった。ある晩、開発部門のヘッドマネージャーとのディナーの際、彼はイタリア本場の自家製ジュースについてそのレシピや材料を解説してくれた。その隠し味とは、どうやらカンパーニャ地方の新鮮なトマトのようである。そして、次の木曜の日、私はいつも通り空港へ戻る時だったが、大変嬉しい出来事に出会った。それは、開発部門のヘッドマネージャーである彼が、私がベルリンへ戻る前に、私のデスクへ本物の自家製ジュースプレゼントしてくれたのだ。

プロジェクトが始まり2ヶ月半が過ぎた。ついにクライアント企業はパーマネントの上市管理マネージャーを認定し、私は新マネージャーのトレーニングに当たっていた。そしてその12ヵ月後、クライアントの新薬が見事に承認されたのだ。実は、今回私が再び彼らのもとへ呼ばれたのは、価格・償還交渉のためのコスト対効果モデルを準備するためだったのである。

イタリアに広がっている霧は残念ながら、彼らの自家製ジュースのように一度でなくなってしまうようなことはない。むしろ、一層濃くなってしまった。しかし、再び彼らとともにする新プロジェクトに想いを巡らせるのもまた良いものであった。