軌道に乗ることのできなかった大型軸製品ビジネスモデルに対する救済策としてのポテンシャルを見込まれ、個別化医療はしばしば躍起に取りざたされてきました。ハ―セプチンや薬剤体制HIVウイルステストなどいくつかの成功を機に、今後医薬品と診断検査を一組にしたセット型医療がマーケットのトレンドとなることで、これまでの製薬、診断業界のビジネス、プライシングモデルに大きなインパクトを与えることが期待されていました。しかし、実際にはレセプターポリモーフィズムが未だ臨床用アプリケーションとして十分に応用されないままであったり、EGFR薬品(アービタックス、タルセバ、イレッサ)に見られるよう、その道はむしろ険しいということが明らかになっています。
技術面での課題は多く、疾患に対する医薬品の有効性を見極めるための予期バイオマーカーと、病気の進行度を測るための予後診断バイオマーカーとを完全に区別化して扱えるようになるまでには、まだ多くの難題を残しています。よって、近年製薬企業では、個別化医療についてのビジネスモデルはその規模をバイオバンク・イニシアチブまで縮小し、病気の早期段階において兆候を見落とさぬようバイトマーカーを用いている傾向が読み取れます。また、かつて個別化医療プレイヤーとして自らを定義し始めていた多くの診断機器企業も、診断価格がある種の固定となっている点やフィー・フォー・サービス(サービスごとの報酬)が一般化している点などの理由を挙げ、現在ではバリューキャプチャーは医薬品にあるとの認識を持っています。
カテニオンでは、一つの新技術が安定したプラットフォームとして定着するためには、最盛期、抑制期、第二次最盛期、安定期といういくつかのステージを経るという見方をしております。よって、個別化医療についても同様に、初期の期待がピークに達した後、徐々に抑制の道をたどり、過去数年においては不振期にあったという見解を持っております。モノクローナル抗体など他テクノロジーが辿った道に従うならば、個別化医療も今まさに第二次最盛期を迎えようとするところで、それは規制的枠組みをもって、バイオマーカーや診断検査が安定的に新薬開発及び臨床試験へ取り込まれているという事実からも裏づけすることができます。その一方、ビジネスモデルとしては、従来のR&Dプロセスにおいて個別化医療アプローチが与える影響や、また医薬品と診断を一体化した上での価格設定及び流通など、解決すべき課題が多様に残っていることが示唆できます。
カテニオンでは、製薬・医薬診断業界をリードするこれからのプレイヤーに向けて、技術面そしてビジネスモデルの両面を十分に考慮した戦略開発支援を続けております。